■ INNOVATION #07

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■ INNOVATION #07

日本の経済構造・地方再生のカギ vol.2

岩本氏:ある時点でビジネス自体がブレイクスル―させる必要があっても、地方の中では、そのきっかけがなかなか掴みきれず、行き詰まるところもあると思います。そのときに海外を利用して深堀をするというアイデアはすごく有効ですね。

ところで、最近あらためて知って驚いたんですが、自治体への補助金があまりにもずさんというか、ずぶずぶというか。そんな甘いお金があれば、実際のビジネスを掘り下げる作業よりも、補助金をもらうことに執心して楽しちゃおうという発想になってしまうのかなと思います。地方の補助金についてはどう思われますか。

柳下氏:「補助金は、人を馬鹿にする」という言葉がありますが、非常に言い得て妙というか(笑) 地方の活性化を考えたとき、大企業を呼んでくるといったことがありますが、地方に既にある企業、或いはその地域の人を巻き込むということが非常に大事なんです。

岩本氏:地域全体を巻き込む、確かにそうですね。勝手に大企業の論理でやっていくだけではダメだということですね。

柳下氏:ええ。まずその地域の人たちが、自分たちでその地域で価値を生み出し、その価値を上げていくという、意識改革をした上で、事業の再生をすることがとても大事です。

危機感の中で、地域の人たちとどう連帯の絆を強めるかや、地域の調達率を上げていくには、どうすればいいかを掘り下げて考えていく地域密着企業であれば、その企業に対する愛着も違ってきますし。雇用の生まれ方も違ってきます。そういう点でも、企業のステークホルダー全部がWinWinの関係にならないと、企業は存続しないと思います。

岩本氏:従業員もしっかり巻き込む。
柳下氏:ステークホルダーの中でも、消費者=顧客と従業員というのは被っていることが多いわけですね。しかもその地方自治体は、その人たちが払っている税金を使っているわけですから。

そうするとステークホルダーの中に何重にも入っていらっしゃる方がいると。そうすると一方だけで偏重してしまうと、やはり偏りができてうまく廻っていかないんです。

それは国の考え方も結局同じなんですけれど、企業が長く存続して企業価値を生み出し、すべてのステークホルダーに対して正当な価値を配分していくということを、まずは考えてもらいたいと思いますね。

岩本氏:私もそうですが、柳下さんも外資系で勤めておられました。イメージだけでよく「ハゲタカ」と言われますけれど、おそらく皆さんが想像されているよりも我々はもっと「まとも」な発想で経済活性化へのアプローチをしていると思うんです。

きちんとお金が循環するような構造にしようとか、自分たちの持っている技術や資源の中で収益や付加価値を生み出そうと言っているだけで、あまり突飛なことを求めているわけではないんですよね。

言うなれば非常に地味な部分ですが、そこにきちんとクローズアップするような意識改革がまずは必要ではないでしょうか。先ほどご指摘のあった危機感が足りないという点ですが、そうした意識改革はどうすればできるんでしょう。やはり自治体のトップが変わっていくことでしょうか。

柳下氏:日本人はとても真面目で優秀ではあるんですよね。特にオートパイロットカントリーと言われるように、現場でまじめにきちんとやるという意識が非常に強い。ただ全体を俯瞰したとき、それがどういう影響があって、どう動くべきかという意識が低いんです。

組織を守る方向といいますか、ただ目の前のことや上から言われたこととだけで上手く利用されているというか、組み込まれてしまうパターンが多いので、まず庶民の人たちから意識改革が必要だと思います。少しは出始めてはいますが、まだアベノミクスの評価が高いようですなので(笑)
岩本氏:世論調査では高いですよね。どういう調査方法なのかはよくわかりませんが(笑)

柳下氏:先日ツイッターで面白いものを見つけたのですが、「増税しました。解雇を自由にします。残業代は無くします。年金は減らします。生活保護は締め付けます。配偶者控除は無くします。共働きしてください。子どもは産んでください。保育所はそんなに増やしません。保育士の待遇は改善しません。代わりに法人税は下げます」アベノミクスを要約するとこれですよという投稿があって、すごいなと(笑) これでよく暴動も起こさずに粛々と受け入れている日本人というのはいったい(笑) 

暴動とはいいませんけれど、そろそろ真っ当な形で戦っていかないといけない、意見を出していかないといけないんじゃないかと思いますね。

岩本氏:本当にそうですね。国会に参考人として行ったときに思ったんですけど、私のイメージとしては、きっと誰かが国家のグランドデザインを一応は考えているものと勝手に思い込んでいました。

そのグランドデザインの元で皆さんはどうしたらいい、こうしたらいいと国会の場で話し合っているのだろうと、希望的観測もあったのですが、そう想像してたんですね。しかし、実際行ってみると結局、利害団体の代表者で集まって議論を行っているわけですよね。

それぞれの利権に絡んだ代表者の人たちがその場にいて、やっていることといえば、自分たちの陣地をどれだけ広げられるかという目先の話しかしていない。そうなると、例えば中小企業の代表者や一般国民の声の代表者がいなければ、中小企業も一般国民もそこに代表者を送っていない人たちは蚊帳の外ということになってしまいますよね。

現状を変えたいのであれば、自分たちの声を伝えてくれるような代表者を国政の場に送り込むよう、選ばなければいけないのだなとしみじみ思いました。政治の話は日本ではタブーされがちでしたけれども、そろそろ政治にも違う意味での参加のしかたや考え方を始めても良いですよね。
柳下氏:先ほどの「朽ちるインフラ」も、つまりは今後50年間危機的状況だという話なんですが、それはアメリカも同じ状態なんですね。2020年までに3.6兆ドル必要で、今2兆ドルまで予算はついているけれど、あと1.6兆ドル不足していると。

そこでいろんな意見を聞く中で、当初は日本と同じく公共投資で景気浮揚を考えていたのが、まずは改修に手をつけなければいけないという方向に舵を切り始めています。

日本も同様に叫ばれていたのに、なぜか急に10兆円公共投資として増やしていくことになって、全く忘れられてしまっているという状況で、今は全く聞かれない。

そういった一時的に盛り上がっても、立ち消えになってしまうことが多いので、シラけている部分もあるのでしょうけれど、そこをもっと細かく見て、根気良く声を届けようとしないところがじれったいですね。

岩本氏:面倒臭くなっちゃうんでしょうね。地味な作業をコツコツやっていくことが重要ですが、忘れやすいというか喉元過ぎれば、の感じが多いと思います。

今公共事業というとやはり被災地中心と皆さん思われると思います。沿岸部に防波堤を作ればいいという話には枚挙にいとまがありませんけど、単純に防波堤でよいの?本当にそれで災害を防ぐことになるの?というものもありますよね。

公共投資を全部否定するつもりはないんですけど、今のやり方だと、ちょっと違うかなと恐らく皆さん感じてらっしゃるはずなのに、実際にはその違う方向に動いていってしまうもどかしさもあります。

柳下氏:なぜ動かないのかなと思いますね。

岩本氏:国土強靭化政策というと、一部の財閥に流れてしまうというようなスキームになっているんでしょうか。被災地での有効策として、これはと思うものはありますか。

柳下氏: 民間では、被災地の女川町の住宅復興に、電子債権を使った、SPCを介した小口の補助で、うまく流動性を高めて住宅を再建していこうという動きが、三菱総研を中心に出てきていますが、そうした小さな施策が大きな波になっていかないというか、政府を焚きつける動きになっていかないのがもどかしいですね。

2014/07/04


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