■ FINANCIAL #02

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■ FINANCIAL #02

世界から俯瞰する日本の経済 vol.3

なぜ投資をするのか。海外から見た日本
仲川氏: やっぱりここにきて、通貨っていったい何?という話になるんですが、たとえば1万円札って、あれは日本銀行券ですが、言ってしまえばただの紙切れ。

それも1枚20円くらいで作れると聞いたことがあります。国の特権は「通貨発行権」と「徴税権」ですが、20円の紙を1万円で売るわけですからボロい商売ですよね(笑)

岩本氏: そうですね(笑)まあ、それで商売がなりたつんですけれど。

仲川氏: お金って保存の手段や交換の手段として使われますが、言ってみれば、1万円札であればお互いに1万円の“値打ち”があると思っているだけの話ですからね。

じゃあそれが何に担保されているのかというと、負債と資産で考えると、1万円札を発行している日本銀行のバランスシートの信用で成り立っているんですよね。

岩本氏: ええ、それと世界から日本国としての信頼があるということで成り立っています。

仲川氏: その「日本国としての信頼」というのは、日本という国が潰れる心配がないという信頼。でもおかしなことに、国内では自らの国を信頼できないとマスコミが報道している一方で、海外ではリーマンショックやユーロ危機となったら「逃避通貨」として、円が信頼されて買われる。これって矛盾していませんか(笑)

岩本氏: 矛盾していますね(笑)

日本は市場も大きいし参加者も大きい。やっぱりなんといっても対外純債権が21年連続して世界最大で余剰資金が約253兆円。どこの国と比べてもこれだけの余剰資金を持ってる国は他にない。

対外的な債務もその余剰資金で賄えますし、そもそも対外債務は少ないこともあって、世界の中では日本は安全だから、何かあったときは円を買いましょうということになっています。

ところが当の日本国民は、財政破綻になってしまうんじゃないかといったマインドを持ってしまっている。そうではなく、世界中から最も安心した国であると思われている中での円高であるという認識は必要だと思います。

仲川氏: なるほど。どちらかといえば金融業界は、今日本が厳しいから海外の金融商品、株や債券に移したほうが良いといった流れがあります。もちろんいろんな国に分散して持つことは良いことですが、多くの投資家はその時々の情報に左右されて動いてしまう。

その中で、自分の資産を保全するには、為替に関していえば、どういう考え方を念頭に置いたほうが良いと思われますか?

岩本氏:やはり一部の証券会社さんも金融機関も、ターンオーバー、回転売買で手数料を稼ぐということがまず先にありますから、売ったり買ったりしてもらうことが前提ですね。

まずそこを念頭に置いていただいた上で、投資というのは余剰資金があっての「賭け」ですから、老後の資金を金(ゴールド)だけ全部、ドルだけ全部といった一つだけに集中するのはリスクが高すぎます。

余裕資金で分散投資してそのうち一つでもうまくいけばという、むしろその程度でしかすべきでないと思いますね。

仲川氏: なるほど。

岩本氏: そもそも海外の人たちはなぜ投資をするのか、海外の金利がなぜ高いのかというと、海外の通貨はそのまま紙幣として持っていたら、通貨価値が下がってしまうんですね。

つまり、金利が高いということは、いつか下がるがゆえになにかに投資をしなければいけない。片や日本の場合、少なくともこの20年はずっと紙幣を持っていても価値が変わらなかった。金利が低いということは価値が下がらず良かったわけです。

仲川氏: なるほど。我々の子供の時代、日本が新興国から先進国になる過程で、長期産業資本の育成ということで貯蓄を奨励してきましたよね。銀行が国の金融仲介機能を果たすべく、とにかく預金を集めて、重厚長大産業を国の基幹産業にするという政策を推進してきました。

それは正しかったんですが、先進国になったらこんどは、間接金融から直接金融がメジャーになり、小泉政権の時には「貯蓄から投資へ」ということになりましたね。そこでリスク・マネーをどんどん提供しようと叫んだにもかかわらず、個人金融資産1500兆円のうち、負債を除いた純資産が約1千兆円。

その中で株式や債券、投資信託等を含めた有価証券投資の比率がいまだに10数パーセントしかなく、今だにほとんどが預貯金に偏重しています。

いまのお話ですと、資産を劣化させないことが自分の資産を守るという観点では、預貯金偏重を守ってきた日本の国民は間違った選択だったということになりますか?

岩本氏: いえ、この20年ほとんど円の価値が変わらなかった訳ですから、預貯金で守ってきたことは大正解だったんです。増えないけれど減りもしなかったということですから、家計の投資行動としては正しかったと言えますし、それで充分だという考え方もあります。

ですが、そこからさらに増やしたいとなると海外に投資するしかない。つまりこれから経済成長しようとする国に投資して、彼らの経済成長に載ってひと儲けしようという発想になります。それも結構ですがコントロールはとても難しい。私も為替ディーラーでしたが、高金利の場合は調整がドラスティックに入りますから持っていて怖いんですよ。

ストップロス(損切りの注文)を毎日毎日見直して、どのくらいひっぱるかの計算を綿密にしなくてはならない。結果的に長期保有したということはあっても、金利がつくまで何もせず放って置こうということはまずしませんでした。

 

2012/09/24


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