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■ FINANCIAL #02

世界から俯瞰する日本の経済 vol.4

その投資にストラテジーはあるか
仲川氏: 高金利通貨は逆にいうと、インフレによって通貨価値が劣化するので、それを避けるために高金利にせざるを得ないということですから、それをまずよく理解することですね。

それに、企業や為替ディーラーが行う投資に対する時間軸と、個人投資家の時間軸とは全く違う。企業や為替ディーラーには「決算」がありますから、期間収益を上げなければいけないですが、個人投資家の場合は「決算」がない。

それが個人投資家の最大のメリットでもあるんですが、つい近視眼的な行動に陥って企業や為替ディーラーなどと同じ時間軸で売買してしまう場合が多い。そこに資産が増えない原因の1つがあるんじゃないかと感じますね。

また、新興国投資の場合、過去の歴史を振り返っても新興国で起りうることは2つあって、1つは、当然経済成長しますから、「株価」と「マーケットキャップ」が拡大してくる。

例えば、私は1966年生まれなんですが、その時代の日本はまだ新興国の時代で、日経平均株価がおよそ1,500円位だったんですね。それがたった20数年後の1989年末には38,915円になった。1,500円が約4万円になるという、とんでもない事が起こりました。

それともう1つは、「通貨の切り上げ」。日本でも1970年の変動相場制以降、それまで1ドル360円という固定相場制から変動相場制に移行したら240円になり、1985年のプラザ合意を経て120円になりと、20年間で通貨価値が3倍になりました。

ということは、新興国だった日本に外国人が投資して、20年定期のつもりで放っておいたら、「株価」が約25倍に値上がりして、投資通貨である「円」が3倍になったので、25倍×3倍で75倍になった勘定になります。これが新興国投資における“果実”なんですよね。

それと同様に、数年前から中国への投資がブームになりましたが、その中でも、やれ中国は北京オリンピックまでだとか、上海万博までだといった情報に右往左往する方々もいました。

しかし長期的な目線で新興国の“果実”を享受するという前提であれば、そうしたことって、いわゆる“ノイズ”なんですよね。短期的なネガティブイベントが発生しても、長い目で見て心配しない。そういう発想でないと資産は増えないですから。

聞くところによると、イギリスなどは、年金等の投資対象アセットも、かなりの割合で“イギリス国外の株式”で運用されているそうですし、米国のエール大学をはじめとする有名大学の基金なども同様のようです。運用対象の大半を自国内の債券で持つ国って、実はほとんどないそうですね。

岩本氏: そうですね。日本が特異なんだと思うんですけれど、突き詰めればやはり、どんどんドル安、ポンド安となってくると、それをヘッジするためには海外に投資するしかないんですね。

ですから今の円高になっている日本の状況と、通貨安になっていく彼らの状況とは全く違う。通貨安の彼らにとってみれば、海外投資は有効となりますが、日本人の場合は少なくともこれまでの40年間は円高ですから、海外の方と同じことをしても利益を上げることは難しいんです。

これまでの国債投資や貯蓄は正解でしたが、今後については日本の国力がどうなって行くか。昨年の震災などいろんな特殊要因で、貿易収支に関しては赤字もありましたが、所得収支に関しては、海外投資やM&Aのリターンによって、ここ数年で10兆円以上のプラスになり、今の時点での経常収支は黒字を維持しています。

黒字が溜まってくると、対外純資産も年々増えていくという構図で、このパターンが変わらない限り、日本の経済基調が大きく変わるとは考えにくく、やはり「日本経済はすごく強い」ということになるんです。つまり世界から見た場合日本の円は強いと。皆さんが思ってらっしゃるイメージとは随分違うようですが。

そうすると、日本に投資することが一番良いのかとなってしまいますが、もちろん為替には上下動がありますから、円安に振れたとしても結局はまた円高に戻っていく。そこで自分の投資は長期なのか短期なのかをまず決めて、その上で相場に参入されたほうが良いと思います。

そこが曖昧だと短期の動きに動揺して、売らなくても良いところで売ってしまったりということにもなりかねません。ここは長期保有でここあたりまで行くんだというスタンスでいると、値下がりした時に安く買えてよかったということになりますね。

我々ディーラーでも、このポジションは長期で持とうと思っていたのに、短期的なことが起って動揺して思わず売ってしまうとかといった事がありますが、大概失敗します。やはりある程度腰をすえて、最初に決めた通りのストラテジーでやっていくことが大事ですね。

仲川氏:ただその「ストラテジー」を組めずに右往左往してしまう方が多いですから、そこにコーチングといった役割りを持つ人が必要になりますね。当社はそうした役割りを担っていこうとしています。

岩本氏:海外では、一家に一人、ホームドクターをお持ちですよね。そんなイメージで、やはり金融に関しても、これだけ情報が氾濫して、金融商品の数も大量にあってと、個人がすべて把握するのはとても無理ですから、一家に一人、信頼できるフィナンシャルプランナーを持たれたら良いと思いますね。

昔は銀行がそうした役割りだったんですけれど、2000年代の頃からは、気がつけば疑心暗鬼になってしまった。つまり受け皿が無いんですね。仲川さんはそこを目指していらっしゃるかと思うんですけど、信頼できるお金の相談役は本当に必要ですね。

仲川氏: そうですね。金融に関してはいろんな考え方がありますから、どれが正しくてどれが間違ってるということじゃなくて、いろんな意見があるということを広げていくことも大事だと思うんです。

岩本氏:私も、私の考え方が100%良いと押し付けるつもりは全くなくて、経済情勢を考える場合、今は少し悲観論が過ぎますので、正確に把握するためにも常にバイアスをニュートラルにしておきましょうということなんです。

仲川氏:そうですよね。極端に振れてしまいがちですからねえ。

岩本氏:バブルにいったら、バブルにいっちゃいますし(笑)

仲川氏: そうなると岩本さんの本も読まないといけないし、藤巻さんの本も読まないといけないし、副島さんの本も読まないといけないしで・・・(笑)そうした考える材料があって、最終的に自分の投資を判断するということが大事なんですね。

岩本氏: そうですね。藤巻さんと対立しているように思われがちなんですが、ある部分での問題意識は共通していると思っているんですよ。

 

2012/09/24


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